著者/訳者名 副島隆彦/著
出版社名 徳間書店 (ISBN:978-4-19-862010-3)
発行年月 2007年07月
サイズ 254P 20cm
価格 1,575円(税込)
この著者の本を読むのは初めてです。昔、研究者の英和辞書を徹底的に批判して裁判沙汰になったことは知っていますが、それ以来の邂逅です。近頃の金融危機で、この問題をどのように考えたらいいか、調べるため公立図書館のサイトで検索していたらこの本に出会いました。
かなり個性の強い本ですし、著者です。個性が強いのだけど田中宇氏とも違うし、反中国・親米・親靖国神社の櫻井よしこ氏とも違う評論家です(たまたま、最近読んだ評論家を持ち出しただけです)。サブプライムローン問題が根っこにあってアメリカの大手投資銀行が相次いで破綻し、ドルが暴落し金融恐慌もやってきて、著者の主張に耳を傾けるあたいがある本だと思います。ただし、政治学や社会学等をいろいろ広く知った上で読むべき本でしょう。何も知らないでこの著者の本を読むべきではないように思います。この著者の信奉者などになったら、特に若い人などは危険に思います。どのようにして、このような強い個性になったのか知りたくてウィキペディアをみてみました。学生の頃の高い志と実社会に出て荒波をくぐり抜けて、いまは、小金を持ったジジババを相手に利殖の本を書いている自分と、余計なお世話だが、どのように統一しているのだろう?! 若い頃の志は「若気の至り」とでもいうのだろうか?
この本を読んでいて気になったことが二三あります。二酸化炭素の温室効果を正しく理解していないで、60~70年代の大気汚染が地球の温暖化をもたらすように考えている節があります(P85)。それから、Windows というパソコンの基本ソフト(OS)のことを、「インターネットにつなげる基本ソフト」というような記述がありますが(P226)、これも明らかな間違いです。という例に示されるように、著者は、サイエンスに詳しくないのが明らかなように感じました。
本の内容
目先の円安と低金利に騙されるな。やがてドルは暴落し、円は1ドル=80円へ。そして、金融恐慌が世界を襲う。いまこそ資産を金・ユーロ・人民元に移せ。
目 次
第1章 2008年末からドルが大暴落しアメリカ帝国は衰退する
第2章 世界はこうしてドルに騙された
第3章 かくてドル覇権は崩壊していく
第4章 日本はどこまでアメリカに毟られるのか
第5章 アメリカが衰退し、中国が次の超大国になる
著者情報
副島 隆彦(ソエジマ タカヒコ)
1953年、福岡市生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校講師を経て、常葉学園大学教授。ベストセラー『預金封鎖』(祥伝社)、『英文法の謎を解く』(筑摩書房)などの著者として知られる碩学。日米の政界・シンクタンクに独自の情報源を持ち、金融経済からアメリカ政治思想、法制度論、英語学、歴史など幅広いジャンルで、鋭い洞察と緻密な分析に基づいた論評を展開。また、副島国家戦略研究所(SNSI)を主宰し、日本人初の「民間人国家戦略家」として講演・執筆活動を続けている
著者/訳者名 大井幸子/著
出版社名 日本経済新聞出版社 (ISBN:4-532-16484-2)
発行年月 2004年10月
サイズ 327P 20cm
価格 1,890円(税込)
今年(2008年)9月からあらわになった世界的な金融危機をつうじて感じたことは、経済のグローバル化がすすんでいるこの世の中で、身近な庶民の生活も大きく影響を受けるということです。アメリカ人が、サブプライムローンで住宅を取得したり住宅バブルで現金を取得したりしていたが、一見これらは日本人になんの関係もないものと思っていたことが、昨夏のサブプライムローン問題が顕在化して以来囁かれていた金融危機が現実のものになり、世界的に影響が出始めて庶民は慌てはじめています。何を隠そうその一人が私なのだが、世界の経済・金融の仕組みを知らなすぎると思い知らされました。
金融工学とかヘッジファンドとかを少しでも知るのにこの本を読んでみました。小説仕立てで読みやすいのですが、金融の仕組みとか詳しくは「読んでもよくわからなかった」というのが本音です。金融エリートという人達の生態が描かれていて、私としては、「うんざり」とした気持ちで読んでいました。エリートがすばらしいという気持ちはこれっぽっちも持っていない私としては、読んでいて苦痛そのものだったが読み通しました。それでなにかが得られれば、という気持ちがあったからです。その筋の生活の一端がかいま見られたのは、収穫かもしれません。彼らが世の中の一端を動かしているのは事実だし、それが私たちの生活に大きく影響を及ぼしている事実が許せない気持ちになりました。「ふざけるな!」という気持ちです。この本の最後の方(P316)に「金融危機が津波のように押し寄せてくるその前兆のようなものを感じた。」と主人公が告白しています。この本が出版されたのは、2004年秋でしたが、今日の金融危機を予測していたのでしょうか?!
本の内容
本書は、一九九八年ロシア危機から二〇〇四年七月までの約六年間を時間軸に、ウォール街の投資銀行やヘッジファンド運用会社の経営陣、トレーダー、投資家、そして、運用者と投資家の間に立つコンサルタント、弁護士、国際税理士など、ヘッジファンド業界に携わるさまざまな人びとが往来・交差する模様を描き出す。
目 次
第1章 ロシア危機
第2章 ノン・ランダム・ウォーク理論
第3章 ファンド・レイジングの新展開
第4章 ITバブル崩壊と九・一一テロ
第5章 ファニー・ファンドの新ビジネス
第6章 ヘッジファンドの新潮流
第7章 アメリカ社会に生きる
第8章 ヘッジファンドの進化
第9章 リスク・コントロール
著者情報
大井 幸子(オオイ サチコ)
1981年、慶応大学法学部政治学科卒業。83年、同大学院経済学研究科修士号取得。85年からフルブライト奨学生としてアメリカのスミス・カレッジとジョンズ・ホプキンズ大学院高等国際問題研究所に留学。87年、慶応大学大学院経済学研究科博士課程修了後、明治生命保険国際投資部勤務。89年、格付け機関ムーディーズ社へ転職。以後ニューヨークのリーマン・ブラザーズ、キダー・ピーボディにて債権調査・セールスを担当。2001年4月、Strategic Alternative Investment Logistics(SAIL),LLCをニューヨークに設立。現在、同社マネージング・ディレクター
著者/訳者名 ビル・エモット/著 伏見威蕃/訳
出版社名 日本経済新聞出版社 (ISBN:978-4-532-35313-1)
発行年月 2008年06月
サイズ 401P 20cm
価格 1,890円(税込)
読み応えのある本です。例えば、北朝鮮の金正日の重病説(脳卒中?)がつい最近報道されていますが、彼がもし亡くなった場合、どういうことが起こるか、考えたことがあるだろうか。大混乱が起こる可能性は高い。一番影響があるのは韓国だから、韓国の報道は、金正日が回復しつつあると報道しているが、アメリカ当局者はそのようには見ていない。当然日本にも大きな影響があるだろう。P314 あたりに書かれているので、それを参考にいろいろ考えてみるのは、いまだからこそなおさら重要だろう。
北京オリンピック前のチベット問題に対する抗議行動が盛んに行われていましたが、そもそも「チベット問題」とはいかなるものなのか、ということも書かれています。「2007年に中国政府が、チベットの高僧の転生すべてを政府が取り仕切るというあらたな規制をもうけた P296」と書かれていいるが、どうなんだろう、私はあ然としてしまいました。中国に宗教の自由はない、といってしまえばそれまでだが、チベットの人達は納得いかないだろう。こういう事実を一つ一つ知っていけば知っていくほど、中国の矛盾を感じられるわけです。もちろん、日本についても書かれています。
中国とインドは、1962年、国境をめぐって紛争が起こった。国境問題も書かれていて、歴史的にも複雑であるが、分かり易く書かれている。もちろん、日中間にも尖閣諸島をめぐる問題で、中国側は自国の領土だと主張している。
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著者名 三輪節生/著
出版社名 石風社 (ISBN:4-88344-070-2)
発行年月 2001年05月
サイズ 284P 19cm
価格 1,890円(税込)
この本は、長崎県諫早市近辺の諫早湾干拓事業をめぐる問題点を書いた本です。同時に諫早湾の持つ自然の豊かさも書かれています。地元に住んでいない私たちは、テレビニュースなどで干拓事業を進めるために作られた潮受け堤防の水門を閉じる「ギロチン」の映像で記憶に残っている人は多いと思います。
問題が多いこの公共事業をなぜごり押しするのか?、疑問を感じてこの本を手にしてみました。必要性の少ない公共事業の問題点がぎっしり詰まった典型として「諫早湾干拓事業」が描かれています。更に、諫早湾周辺の干潟の持つ浄化能力の高さが何度も書かれています。干潟の浄化能力というのは、人々はあまり知らないのではないでしょうか。私も今回この本を読んではじめて知りました。干潟をつぶして下水事業に莫大な予算をつぎ込まねばならない地方自治体の転倒したやり方に怒りも覚えるくらい、この事業はクレージーさがあふれています。
干潟の浄化能力といのは、簡単に言えば干潟に住む無数の貝類やカニ、ゴカイを含む底生生物が有機物を餌にする。そして、泥に穴を掘りその穴に酸素が供給され腐敗を防いでくれる。無数の貝類を水鳥たちが餌にする。という循環で水質が浄化されるというメカニズムです。
この事業につぎ込むお金は、約2500億円。この予算をつぎ込むなら、その予算の数分の一で川の堤防補強などや排水ポンプの設置をして洪水対策をした方が合理的だ、というのが著者の主張です。農地だって、いまでは全国にあまっている。無理して干拓事業をする合理的な理由は無しだ。推進派は、長崎県と諫早湾周辺の市町村自治体と農民。大きな被害を受けているのは、漁業者たち。「よそ者が口を挟むな」という偏狭な根性も気になるところです。
希少種の渡り鳥が、干潟をつぶすことで激減した事実も出てきます。心が痛みます。諫早湾というのは、たくさんの渡り鳥の中継地でもありました。
この本を読んでいて率直に感じた感想は、繰り返しが多い。同じ記述が何度も出てきて閉口してしまいました。もっと圧縮できたのではないか。
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著者/訳者名 渡辺将人/著
出版社名 講談社 (ISBN:978-4-06-287949-1)
発行年月 2008年06月
サイズ 245P 18cm
価格 777円(税込)
私にとっては、一気に読むことができた新書です。アメリカについて考える場合、宗教について分析する場合もあれば、「保守とリベラル」という切り口で分析する場合もあります。本書の場合は「保守とリベラル」です。
著者は、まだ30代そこそこの研究者ですが、アメリカに長く住んでいたようで、しかも、実際に選挙にも携わった経験をいかしてよどみなく筆は進む感じで本書は書かれています。何ヶ月かアメリカに滞在して本を書くというアメリカ研究者にありがちなタイプではなく、実際アメリカで仕事をした(民主党の選挙活動)強みが本書には現れているように感じられます。
一言で「保守とリベラル」といっても、いろいろな多様性があることが本書を読み進む内に分析されています。かなり詳しく書かれているので、読み進むには忍耐が必要に感じました。こういう多様性をふまえた上でアメリカについて分析しないと一面的な考えに終わってしまう恐れがある事を肝に銘じなければなりません。
スターバックス・コーヒーのリストラが最近のニュースに上がっていましたが、このコーヒー店を利用するのは、民主党支持者が多いというのもはじめて知りました。クアーズビールをおもに飲むのは、共和党支持者のライフスタイルというのも、初めて知って納得です。日本人には知らないことがいっぱい詰まっています。一度読むことをお勧めします。
本の内容
アメリカ人はみんなワシントンが嫌いだ!日本からはわからないその意外な素顔。スタバ好きはリベラル!?知らないアメリカ発見の旅へ。
目 次
第1章 「保守」と「リベラル」
第2章 都市 移民のシェルター
第3章 南部 怒りの独立王国
第4章 信仰 共同体にひそむ原理主義
第5章 メディア 大衆化の舞台装置
終章 自由主義 アメリカ精神の奥底
著者情報
渡辺将人(ワタナベ マサヒト)
1975年東京生まれ。シカゴ大学大学院国際関係論修士課程修了。ジャニス・シャコウスキー米下院議員事務所、ヒラリー・クリントン上院選本部=アル・ゴア大統領選ニューヨーク支部アウトリーチ局(アジア系集票担当)を経て、テレビ東京入社。報道局経済部にて「ワールドビジネスサテライト」ディレクター、取材センター政治部記者として総理官邸、外務省、防衛庁、国会を担当。テレビ東京退社後、コロンビア大学ウェザーヘッド研究所を経て、ジョージワシントン大学ガストン・シグール研究センター客員研究員。専門は米政治外交
著者/訳者名 山岡道男/著 浅野忠克/著
出版社名 アスペクト (ISBN:978-4-7572-1476-7)
発行年月 2008年04月
サイズ 239P 21cm
価格 1,680円(税込)
この本は、単にアメリカの教科書を翻訳したものではなく、日本の実情にあったかたちでアレンジされているので違和感なく読むことができます。内容は、高校レベルの知識ですが、実用性が高く重要な概念・用語は何度も繰り返して書かれているので勉強に役立つように書かれています。経済の基礎知識を身に付けたい人には、社会人でも実用になる内容です。
本の内容
アメリカでは、高校生からパーソナルファイナンスを学ぶ!金利、貯蓄、投資、税金、保険、需要・供給、株式、債券、リスク、リターン、トレードオフ、インフレ、デフレ、起業、インセンティブ、費用、便益、GDP、輸出・輸入、為替レート。NCEE(アメリカ経済教育協議会)のスタンダード20を日本人向けにアレンジ。経済とお金のことがすらすらわかる!
目 次
第1章 家計の経済学 どうすればお金を増やせるのか?(希少性—資源は有限、人間の欲望は無限
インセンティブ 人間の選択は損得に左右される ほか)
第2章 企業の経済学 経営者は利潤の最大化を目指す(起業家—より大きな報酬のために起業する
企業 個人的欲望の充足V.S.利潤の獲得 ほか)
第3章 金融の経済学 銀行から上手にお金を借りる方法(家計と銀行 あなたの信用で利息は決まる
企業と銀行 銀行はお金の仲介者 ほか)
第4章 政府の経済学 政府も市場も失敗をする(パーソナルファイナンス国債編 国債の利回りで景気がわかる
財政政策 政府は企業の代わりに公共財を作る ほか)
第5章 貿易の経済学 日本は再び鎖国できるか?(貿易 自由貿易は世界全体の生活を豊かにする
外国為替相場 為替レートは通貨の需要と供給で決まる)
著者情報
山岡 道男(ヤマオカ ミチオ)
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。1948年、東京生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程中退。学術博士(早稲田大学)。専門は、アジア太平洋地域の国際交流論、経済学教育論
淺野 忠克(アサノ タダヨシ)
山村学園短期大学コミュニケーション学科専任講師。1951年、東京生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。専門は、国際経済学、経済教育論、高等教育論
著者/訳者名 金子勝/編著 高端正幸/編著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-023848-9)
発行年月 2008年04月
サイズ 205P 20cm
価格 1,785円(税込)
大都会でない地方に住んでいるものにとって、いま一番切実に感じていることは、このままここに住み続けられるのだろうか? という疑問ではないだろうか。医者にかかりたくても病院がない。介護を受けたくても、いろいろ制限があって実質受けられない。老後になって、少ない年金で生きていけるだろうか? そもそも、年金受給時になって、年金制度が崩壊しているかもしれない! 地方格差、所得格差。そもそも、このようながたがたの社会にした張本人がいるはずだなのに、人々はそれに気付いていないようだ。「改革」「改革」と叫んでいる政治家たちが、実は改革でもなんでもなくこの国を滅ぼそうとしているんではなかろうか? と考えたこと無いだろうか? どうも、この本を読んでいると、政治や経済を司っている支配層が、それをやっているように思えてくる。与党自民党は、一周も二周も遅れてアメリカやイギリスの「新自由主義経済」「新保守主義」を追及しているように思えてくるし、実際やっている。
この本では、個別具体的な問題に即して、この国でいま問題になっていることをえぐり出し、解決策を模索している。個別具体的な問題で、いま何が問題なのかをしっかり頭に入れておかないと、テレビその他で問題を提起されても、何が問題なのかもわからない状態にされているのが国民の実情だろう。
わかりやすくこの本に興味を持ってもらうために、この本での第7章以降に掲げられている中見出しを掲げておこう。
・根源は中曽根政権期にある
・「行革」は自治体へのツケ回しだった
・歪められた三位一体改革
・財政力格差の拡大と「東京問題」
・取舵を切れない福田政権
・大胆な地方への財源保障を
・バブルが奪ったもの
・なぜ中山間地の農業が必要か
・失敗する規模拡大の農政
・医療崩壊そして介護崩壊も
・遠のく地方分権
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著者/訳者名 本山美彦/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-431123-2)
発行年月 2008年04月
サイズ 220,22P 18
価格 819円(税込)
この本を読んでいて一番感じるのは、経済のグローバル化は、あるいは、金融の自由化は弊害が大きくて世界中の人々を苦しめている、ということだ。逆に言えば、一部の大金持ちが儲かる仕組みを作り上げられた、という被害者意識しか残らない。それだけ弊害の側面を掘り下げた本だといえるのではないか。もちろん、探せばメリットもあるのかもしれないが弊害が大きすぎて、メリットが思い浮かばないということだ。
サブプライム問題が去年から持ち上がり株価は低迷しあまったマネーが石油の先物取引へと流れて原油価格の高騰を招いている。ガソリンは、180円/リットルを超えている。一方、若者を中心とした定職に就けない人達の割合も増え続けている。雇用の不安は、将来への不安を誘い自暴自棄になり秋葉原で7人もの殺人へとつながった(2008/06/08)。
どれもこれも「経済のグローバル化」がもたらしたものだ。サブプライム問題は、回り回って日本の金融機関でも巨額の損失を出している。金融機関を救済するために各国の中央銀行は市場にお金を大量に供給した。その結果、世界的なインフレが起こりいろいろな物価が上がっている。このような「経済のグローバル化」によって世界中の人達が影響を被っているが、このようなことを引き起こしている構造的な権力として、筆者は、ワシントンを中心とした「金融権力」を取り上げ解明している。いまや、庶民でもアメリカの「金融権力」のことを念頭に置いて物事を考えなければ、世の中がわからない時代に突入している。とにかく「金融権力」というのは、自分たちで勝手な(自分たちで都合のよい)ルールを作って世界中に押しつけてくる。その一つが、金融の自由化である。格付け会社も、アメリカの一私企業に過ぎないのに大きな権威と権力を握って会社にリストラを迫ったりする(アメリカの自動車メーカーのGMやフォードに)。その格付け会社も、サブプライム問題で化けの皮がはがされた。リスクの大きい証券をリスクが少ない格付けにしていたのだ。この辺のことをこの本で読んで怒りを覚えない人はいないだろう。それほどデタラメにシステムを築き上げているのだ、金融権力というのは。
経済のグローバル化がもたらした弊害がいろいろ論じられ、それに対する打開策も模索されつつある。この本では、打開策の一つとしてピエール・プルードン(1809–1865)の思想が紹介されている。プルードンといえば、マルクスを思い出す人も多いだろう。マルクスが『哲学の貧困』で徹底的に批判したあのプルードンである。プルードンは、「人民銀行」という構想を打ち出す。これは、いまでいえば地域通貨の考えのようだ。マルクスのように政治革命を目指すのではなく漸次的な改革を志向していたようだ。人々の相互の信頼を基礎に置いた「相互主義」を唱えた。マルクスがブルジョアジーを信頼していなかったのとは正反対の思想といえるのじゃないか。20世紀の「戦争と革命の世紀」を経てきた今日、漸次的な改革を目指すのも無理もないのかもしれない。
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この本は、岩波書店で「哲学塾」と題してシリーズ化されている中の一冊です。一般読者向けに書かれているもので比較的読みやすく書かれています。著者は、現象学を専攻している学者なので、現象学的なものの見方で書かれていて、現象学がどういうものなのかを知るのによいかもしれません。
私は、2回に分けて読んでしまいましたが、150頁ほどの薄い本なので一気に読んだ方が理解しやすいかもしれません。
著者/訳者名 村田純一/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-028154-6)
発行年月 2007年10月
サイズ 150P 18cm
価格 1,365円(税込)
本の内容
古代ギリシアの「汝自らを知れ」という格言は、今日も哲学を貫くテーマでありつづけています。「わたし」は思考するだけではなく、身体があって他者や周囲の世界とかかわり、知覚し、行為し、情動をもって意志決定します。脳科学・認知科学の知見も織り込みながら、さまざまな「わたし」の諸相を探険する「心の哲学」の講義。
目 次
第1日 「わたし」の起源
第2日 身体としての「わたし」
第3日 他者との出会い
第4日 わたしの「内面」
第5日 考える「わたし」そして/あるいは行為する「わたし」
第6日 脳と心
第7日 「わたし」の消滅
補講 色彩をめぐる他者問題 わたしの見ている色はあなたと同じだろうか?
ラカンの本は、1冊も読んだことないしフロイトの本も読んだことがない。ただ、ラカンもフロイトも一般の人が持っているちょっとした知識はある。その程度だ。その私がこの本『ラカンはこう読め!』を読んだのは、ただ「スラヴォイ・ジジェク」を読みたいという願望を持っていたからだ。その程度の私が読んでみての感想は、「読める」というものだ。難しい議論はわからないものの素人でも読み通せるようにように書かれている。映画を取り上げて彼の解説が書かれていたりするので、西欧の一流知識人がその知性に裏打ちされた解説を読むのもおもしろい。もともと、この本は、イギリスのグランタ出版社から出ている入門シリーズの1冊だからだ。これを読んで、更にスラヴォイ・ジジェクの本を読んでもいいしラカンに進んでもいいしフロイトに興味を覚えてそちらに進んでもいいだろう。私はといえば、更にスラヴォイ・ジジェクの本を読みたくなった。彼の本は、今年(2008年)にはいって何冊も出版されている。
「死の前に生はあるのか-日本語版への序文」で、ジジェクは、黒澤明監督の『羅生門』を取り上げて彼のうんちくを傾けているのだが、この短い序文でも精読してみるといろいろな哲学的知識が要求されて完全に理解するのは難しい。だから私はジジェクを読みたいと思うのだろう。あらためて序文を読んでみてそのように感じた。
著者/訳者名 スラヴォイ・ジジェク/著 鈴木晶/訳
出版社名 紀伊国屋書店 (ISBN:978-4-314-01036-8)
発行年月 2008年02月
サイズ 231P 20cm
価格 1,890円(税込)
本の内容
ついにジジェクが書いた!!現代思想界の奇才による待望のラカン入門。
目 次
1 空疎な身ぶりと遂行文―CIAの陰謀に立ち向かうラカン
2 相互受動的な主体―マニ車を回すラカン
3 “汝何を欲するか”から幻想へ―『アイズ・ワイド・シャット』を観るラカン
4 “現実界”をめぐる厄介な問題―『エイリアン』を観るラカン
5 自我理想と超自我―『カサブランカ』を観るラカン
6 「神は死んだが、死んだことを知らない」―ボボークと遊ぶラカン
7 政治のひねくれた主体―モハンマド・ボウイェリを読むラカン
著者情報
ジジェク,スラヴォイ(Zizek,Slavoj)
1949年、スロヴェニアのリュブリアナ生まれ。哲学者・精神分析学者。現代政治から大衆文化まで縦横無尽に論じる現代思想界の奇才。現在、ロンドン大学バークベック・コレッジ人文科学高等研究センターの国際ディレクター
鈴木 晶(スズキ ショウ)
1952年、東京生まれ。現在、法政大学国際文化学部教授。専攻は、文学、精神分析学、舞踊学