著者/訳者名 上杉隆/著
出版社名 草思社 (ISBN:4-7942-1537-1)
発行年月 2006年11月
サイズ 286P 20cm
価格 1,575円(税込)
小泉政権の5年半をもう一度ふり返ってみるのに参考になる本ではと思いました。田中真紀子外務大臣をめぐるごたごたが、なんであったのか、もう一度ふり返るべきだと思いました。人気のある政治家であったが、国民は、そしてマスコミも含めて、田中が大臣にすべき器であったのかどうか見誤ったのが決定的でありました。ドーナツ化現象といって、田中の地元の近くの人は、彼女の本性を見破っていた人が多かったのだが、彼女を遠くからみていた人には、それがわからなかった。民主主義というのは、時にしてとてつもないモンスターを選んでしまうということがあるが、典型的なのがドイツのヒトラーである。そこまでは行かないにしても、小小ヒトラーを選出する怖さがありますね。
北朝鮮に拉致された人々を救出する問題でも、マスコミは当初、取り上げようともしなかったという。いろいろ問題をかかえていた。拉致問題に関わっていた政治家、とりわけ平沢勝栄の問題が書かれています。
過去、小泉政権について書いた上杉自身の記事を再録し、それに対する反省も書かれている特異な本です。特異といったのは、ジャーナリズム、とりわけ日本のジャーナリズムは、自分の書いた記事の反省文を公にしたりはしないからです。でも、アメリカなどでは、それが当たり前だという。匿名ではなく、実名で記事を書き、政治権力と対峙する、という姿勢は大事なことだと思いました。そこまで、日本のジャーナリストはいっていない。権力をチェックし、きちっと権力に対峙するジャーナリストが求められていると、上杉はいいます。(このブログ記事は、書きかけです)
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すばらしいサービスだと思います。私のような本の虫でしたら、たとえ入院していても本は読みたい。そういう人は、多いのではないでしょうか。
入院患者に本届けます 置戸図書館・赤十字病院 午前注文、夕方手元に-北海道新聞(生活)
【置戸】網走管内置戸町の町立図書館・生涯学習情報センター(矢崎秀人館長)と置戸赤十字病院(長谷川岳尚(たけなお)院長、九十五床)が、入院患者への配本サービスを二月中旬から共同で始めた。患者が蔵書から借りたい本を自由に選べる「道内では聞いたことがない」(道立図書館)サービスだ。
患者は貸出申込書を看護師か病院職員に渡し、ファクスでセンターに送信。約三百メートル離れたセンターから職員が病院に直接配本する。午前中に申し込めば、夕方までに本が届く。患者が本を選ぶ際は看護師らがインターネットの蔵書検索を手助けする。返却ボックスは病院内に設けた。
同病院では以前、患者が病院の清掃員に頼んで本を借りていたことがあり、昨年からセンターと病院が対応を検討していた。矢崎館長は「地域の病院をサポートするのは公立図書館の重要な役割」と今回のサービスの意義を強調する。
今後、読んでみたい本です。最近、出版された本ばかりを選んでみました。去年の秋以降、私の興味は、金融・経済ばかりに傾きつつあります。
『グローバル恐慌』 浜 矩子/著 (読んだ)
『世界経済危機日本の罪と罰』 野口悠紀雄/著
『金融資本主義のゆくえ』 金子 勝/著
『マネーが止まった』 田中直毅/著
『アメリカ後の世界』ファリード・ザカリア/著 (読んだ)
『見残しの塔 周防国五重塔縁起』 久木綾子/著
この本は、金融・経済の本ではないが、たまたま、NHKラジオを聴いていた(2009/03/01~03/02)ら、「ラジオ深夜便」でインタビューが放送され、興味がそそられた本です。89歳で、初めて本を出版した方ですが、インタビューを聴いているかぎりとても89歳とは思えないくらい、話が明瞭で理知的ですばらしい人物に思えました。セブンアンドワイのサイトでも、日に日に売り上げランキングが上昇しているのがわかりました。
『ロックフェラー帝国の陰謀 PART・1と2』 ゲイリー・アレン、高橋良典/訳
この本は、1980年代半ばに出版(アメリカ本国では、1976年出版された)された古い本ですが、ロックフェラー一族とそれに操られているアメリカの外交問題評議会(CFR)が、世界支配を狙っている、ということを書いている本です。一見すると何か胡散臭い「トンでも本」のようにも思えるのですが、読んでいる最中ですが、そうとも言い切れない、むしろ真実に近いのではないか、と思えるくらいの本です。おそらく、田中宇が読んでいると、私は推測しているのですが、かなり大きく影響を受けている本だと思っています。訳者あとがきによると、著者のゲイリー・アレンは、カリフォルニアのシール・ビーチに住むフリーのジャーナリスト、とある。
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著者/訳者名 ジョージ・ソロス/著 徳川家広/訳
出版社名 講談社 (ISBN:978-4-06-214915-0)
発行年月 2008年09月
サイズ 251P 20cm
価格 1,680円(税込)
読んで大変おもしろい本だった。歴史とか哲学(大陸系の哲学でなく、つまり、デカルトとかヘーゲルではなく、アメリカやイギリスの分析哲学)を少しでも知っていれば、第1章から第4章は、それほど難しい議論をしているわけではないということがわかるだろう。分析哲学の基礎や時代の大きな流れを主体的に勉強していれば、ソロスの「再帰性」の理論は、常識的なことを話していることだとわかる。特に、自然科学と社会科学とでは、扱っている対象が違う上、人間の行動というのは、不確実な知識や情報で行動するゆえ、自然科学的な手法は使えない、ということを押さえていれさえすれば、ソロス理論は難しくない。
この本は、最初に「解説」なるものが書かれていて面食らう本だが、ソロスの理論を少しでも理解しやすくすると言うか、読むのに抵抗を無くするために「解説」を配置したのだが、解説者が、歴史も哲学もおそらく(私の想像だが)勉強したことがない人物が書いたもので、しかも、今となっては、リーマンショックを体験している読者が読むには、あまりにも無価値な「解説」が載っている! と思える。こんなものを読み飛ばして、ソロスの理論を読み進めた方が良いであろう。リーマンショックを経験し、世界大不況に突入している今となっては、読み進めている読者は、ソロスの主張していることが、大方真っ当な主張だということがわかるだろう。
投資家という人間を肯定的に見ることが未だできない私だが、ソロスという投資家中の投資家を、価値判断を持って評価するには、今しばらく時間を要する、というのが率直な感想です。金融市場に当局の規正が必要だというソロスの主張には、素直にうなずけるし、しかしながら、がんじがらめの規正はダメだとも主張するのだが、どこまでなら良いのか、については素人の私には皆目見当も付かないのも正直な話だ。今回の金融危機で今までのパラダイムは、終わりを告げたと主張する(彼の言葉で言えば、レーガン元大統領からの超バブルは、はじけたという)。この主張は、納得いく方が多いと思うが、ソロスの本を読んでも、新しいパラダイムはどのようなものになるかは、わからない。ソロス流に言えば、再帰理論によって「わからないのか当たり前」とでも言われそうだが。 Read the rest of this entry »
著者 塩川伸明/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-431156-0)
発行年月 2008年11月
サイズ 214,9P 18c
価格 777円(税込)
最近、時事問題を考えるにも「民族」とか「国家」だとかを理論的に考えなければならない場面が多いです。冷戦が終わりこのおよそ20年民族紛争が多発したり、通信・情報のグローバル化によって、かえって問題が発生したりしているのを目にします。こういう本を利用して一度考えてみても良い時期だと思います。
本の内容
地域紛争の頻発や排外主義の高まりの中で、「民族」「エスニシティ」「ネイション」「ナショナリズム」などの言葉が飛び交っている。だが、これらの意味や相互の関係は必ずしかも明確ではなく、しばしば混乱を招いている。国民国家の登場から冷戦後までの歴史をたどりながら、複雑な問題群を整理し、ナショナリズムにどう向き合うかを考える。
目 次
第1章 概念と用語法 一つの整理の試み(エスニシティ・民族・国民
さまざまな「ネイション」観 「民族」と「国民」
ナショナリズム
「民族問題」の捉え方)
第2章 「国民国家」の登場(ヨーロッパ—原型の誕生
帝国の再編と諸民族
新大陸 新しいネイションの形
東アジア 西洋の衝撃の中で)
第3章 民族自決論とその帰結 世界戦争の衝撃の中で(ナショナリズムの世界的広がり
戦間期の中東欧
実験国家ソ連
植民地の独立 第二次世界大戦後(1)
「自立型」社会主義の模索 第二次世界大戦後(2))
第4章 冷戦後の世界(新たな問題状況 グローバル化・ボーダレス化の中で
再度の民族自決
歴史問題の再燃)
第5章 難問としてのナショナリズム(評価の微妙さ
シヴィック・ナショナリズム?
ナショナリズムを飼いならせるか)
著者情報
塩川 伸明(シオカワ ノブアキ)
1948年生まれ。1979年東京大学大学院社会学研究会(国際関係論)博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授。専攻はロシア現代史・比較政治論
著者 リチャード・クー/著
出版社名 徳間書店 (ISBN:978-4-19-862553-5)
発行年月 2008年06月
サイズ 326P 20cm
価格 1,785円(税込)
今まで経済に関する本、とりわけサブプライム問題に端を発する金融危機に関する本を短期間に数冊読んだが、この本は最も読み応えがあり信頼できる分析がされているのではないかと、素人ながら感じています。著者は、しきりに「バランスシート不況」ということを問題にします。これは、著者の独創的な分析のようですが、素人判断ながら説得力はものすごくあるように思いました。これからもこの著者の本は注目しなければならないと思っています。一度、同書を手にとって読んでもらいたいです。買って読んで絶対損しない本です。何か明るい展望とはいえないまでも、ちょっとしたあかりがこの世の中に見えた気がしました。それから、政治学者や政治評論家が書いた本をいくら読んでも日本の政治はわかりにくいのだが、このエコノミストが分析した日本政治は、非常に的確で説得力を感じました。竹中平蔵などの経済学者あがりの政治家が、如何に的はずれなことをしているかがリチャード・クーによって暴かれるあたりは、胸がスーとなります。更に、日銀の政策も見直しました。クー氏は、高く評価しています。
本の内容
米住宅バブル崩壊とともに噴出してきたサブプライム問題、ドル危機、食糧・資源の高騰など、いま世界が直面している危機は旧来の経済学ではまったく対応できない!バランスシート不況の分析で世界から注目を浴びるリチャード・クーが、世界大恐慌を回避するためにいま日本と世界はどう対処すべきか、明確な見取り図と処方箋を提示する。
目 次
第1章 サブプライム問題は戦後最悪の金融危機(いま世界経済が陥っている危機は大恐慌以来最悪の事態
カウンターパーティー・リスクがインターバンク市場を凍りつかせた ほか)
第2章 住宅バブル崩壊のアメリカはバランスシート不況(「大恐慌」以降、アメリカが初めて経験する住宅価格の崩落
住宅価格下落と延滞率増の悪循環に襲われる米国 ほか)
第3章 ドル危機に世界はどう対処すべきか(アメリカはドル安誘導に失敗、巨額の貿易赤字だけが残った
ドル安をめぐって金融当局と議会の立場が逆転 ほか)
第4章 日本はバランスシート不況を脱却できたか(日本を襲ったバランスシート不況は今どこまで来たか
日本企業のバランスシートは改善したが、問題点がないわけではない ほか)
第5章 日本に襲いかかるグローバリゼーションの大波(日本にとってのグローバリゼーションとは「中国の台頭」のこと
欧米が経験した試練をこれから経験する日本 ほか)
著者情報
クー,リチャード(Koo,Richard C.)
1954年、神戸市生まれ。76年カリフォルニア大学バークレー校卒業。ピアノ・メーカーに勤務した後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で経済学を専攻し、FRBのドクター・フェローを経て、博士課程修了。81年、米国の中央銀行であるニューヨーク連邦準備銀行に入行。国際調査部、外国局などでエコノミストとして活躍し、84年、野村総合研究所に入社。現在、研究創発センター主席研究員、チーフエコノミスト。98年から早稲田大学客員教授、99年から防衛研究所防衛戦略会議委員も務める
やっと最近、どうゆう本を読めば世界のグローバリズムの問題を扱っているかわかってきました。この本も、先日紹介した佐和隆光氏の『資本主義は何処へ行く』に出てくる人物で、確か、田中宇氏の論文にもしばしば登場する学者です。これから、じっくり読んでみようと思います。
著者/訳者名 ジョセフ・E.スティグリッツ/著 楡井浩一/訳
出版社名 徳間書店 (ISBN:4-19-862254-X)
発行年月 2006年11月
サイズ 414P 20cm
価格 1,890円(税込)
本の内容
自由化と民営化を旗頭にしたグローバル化は、すべての国、すべての人に未會有の恩恵をもたらすはずだった。ところが今、われわれに訪れたのは、一握りの富める者のみがますます富んでいく、世界規模の格差社会だった。一体これはなぜなのか?ノーベル賞経済学者スティグリッツが、アメリカのエゴにゆがめられたグローバル化のからくりを暴き、すべての人々に利益をもたらす新システムを提言する。
目 次
第1章 不公平なルールが生み出す「勝者」と「敗者」
第2章 発展の約束 ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ
第3章 アメリカを利する不公正な貿易システム
第4章 知的財産権を強化するアメリカの利権集団
第5章 天然資源の収奪者たち
第6章 汚染大国アメリカと地球温暖化
第7章 多国籍企業の貪欲 グローバルな独占を阻止する
第8章 債務危機への道すじ 借りすぎか?貸しすぎか?
第9章 外貨準備システムの崩壊と「ドル大暴落」
第10章 民主的なグローバリズムの道
著者情報
スティグリッツ,ジョセフ・E.(Stiglitz,Joseph E.)
2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、ブリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。行動する経済学者として、世界を巡りながら経済の現状を取材し、市場万能の考え方を強く批判。現行のグローバル化がもたらす様々な弊害に警鐘を鳴らす。2002年の著書『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(小社刊)は、世界38カ国で翻訳刊行され、世界的ベストセラーとなった。続いて2003年『人間が幸福になる経済とは何か』(小社刊)では、アメリカの狂騒の90年代を分析した。現在はコロンビア大学教授
楡井 浩一(ニレイ コウイチ)
1951年北海道大学卒業。英米のノンフィクション翻訳で活躍
著者 佐和隆光/著
出版社名 NTT出版 (ISBN:4-7571-2091-5)
発行年月 2002年12月
サイズ 257P 20cm
価格 1,680円(税込)
テレビをつければ、毎日のように派遣・期間労働者がクビを切られたという話ばかりです。あるいは、正規労働者にも首切りの話が出始めています。世界大恐慌の影響がじわじわと出始めています。この本は、2002年に出版された本ですが、この本の題名は「資本主義は何処へ行く」ということです。資本主義そのものを世界的金融危機の今こそじっくり考えなければならない時期に我々は置かれているのだでしょう。そういう意味で2002年出版の本でも全く色あせしていない本だとおもいます。
筆者は、現代のこの日本を工業化社会から「ポスト工業化社会」への移行期の最中にあるといいます。こういう認識の元、金融、情報、通信、サービス産業が主な産業になる時代になる中、従来型の工業化社会も併存しつつすすんでいくわけですが、それに適応できる体制は十分にできていないのが実情で、皆さん苦しんでいるわけです。どうやったら適応できる体制になるのか、この本を読みながら考えていますが、そもそも、ポスト工業化社会のイメージがわかない。この本が書かれて6年ほど経ちますが、製造業にも情報技術(IT)を取り入れて、生産プロセスと経営プロセスを抜本的に改変してきてはいる。労働市場の流動性も大幅に進められた。金融、通信、情報などのソフトウェアー産業もすすんでいるように見えます。それでも、経済のグローバル化に太刀打ちできない。日本の場合、経済のグローバル化を端的にイメージするには「中国経済の台頭」を思い浮かべればよいと、リチャード・クーはいう。金融市場主義を究極まで推し進めていった結果、世界大不況に陥ったし、労働市場の流動性を究極まで推し進めていった結果、金融危機で世界同時不況に陥り派遣労働者・期間労働者の首切りがいとも易々と推し進められている。世の中、ますます悪くなっていくように感じているのは私だけではないだろう。失業したとしても、それを国民皆でささえる「リスクの共同管理」の仕組みが全く不十分なのが現状だ。著者のいうところのポジティブな福祉への改革が焦眉の課題だと思います。
9.11同時多発テロに対して「市場原理主義に対するイスラム原理主義の衝突」という視点は、非常に説得力のある考えだと思いました。
それから、市場主義を突き詰めていくと市場は「暴力化」する、という考えは、将に今われわれが直面している世界大恐慌を目の当たりにしていて実感できる重要なキーポイントだと思います。
大したことではありませんが、P12に書かれている「インターネットは社会主義を崩壊させるほどの強い力を持った」というのは、明らかに間違い。著者自身が「大量の情報を高速通信できるようになったのは、90年代に入ってから」と書かれているにもかかわらずそのように書くのは明らかに矛盾で混乱がある。
本の内容
アメリカのユニラテラリズム(一国主義)。21世紀「最初の10年」に生起する「変化」。抗しがたい「潮の流れ」グローバリゼーション。「リスクと不確実性の時代」を洞察する。
目 次
第1章 グローバリゼーションは世界をどう変えるのか
第2章 九・一一同時多発テロは二つの原理主義の衝突?市場原理主義に歯向かったイスラム原理主義
第3章 日本型資本主義は何処へ行く?市場主義改革と「第三の道」改革の同時遂行を
第4章 平等と福祉のパラダイム・シフト
第5章 なぜいま日本の構造改革なのか
第6章 中国人・華人経済圏の形成と日本の活路
著者情報
佐和 隆光(サワ タカミツ)
1942年和歌山県生まれ。東京大学経済学部卒。スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授等を経て、現在、京都大学経済研究所所長。専攻は計量経済学、統計学、環境経済学
著者 林敏彦/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:4-00-430038-X)
発行年月 1988年09月
サイズ 228P 18cm
価格 777円(税込)
今から20年も前に出た本ですが、第1章株式市場-を読んでみると、いま現在起きている金融危機のことを描いている錯覚に陥るのは私だけではないだろう。実際は、いまから79年も前の1929年10月のニューヨーク証券取引所の株価暴落や株価の乱高下を描いているのだが。この本を読んでいて思ったのは、これから数年間続く大不況・大恐慌の困難さや苦悩を覚悟せねばならないということです。もうすでに、派遣労働者などが首切りにあっているのを思うと、その感を深めざるを得ないです。お金持ちは別として、一般的な庶民は、いつこの大不況で失業するかもしれないという恐怖と戦わねばならないでしょう。
1929年の株価の大暴落をへて世界が大恐慌へ転がり落ちるように落ちていった。その後何年間も立ち直れなかった。そうこうしている内に、ドイツはヒトラーが政権を握ったし、日本は満州事変を起こして15年戦争へと転げ落ちていった。戦争や侵略で物事を「解決」しようとした国もあったわけです。ソ連邦は、計画経済を進めていた。
大恐慌というのは、歴史の画期を作るくらいのインパクトがあるものであって、生半可な覚悟で乗り切れるようなものではないということがわかってきます。恐れおののく気持ちが先に立つのだけれど、唯一の希望は、1929年の経験を私たちは持っているということ。経済学の蓄積された知見もあるし、世界的に協調して事に当たるという政策的な行動もあります。それから、第3次世界大戦を突き進んでいく状況ではないということを考えると、まだ希望は持てるような気がします。
出版社/著者からの内容紹介
一九二九年十月,ニューヨークを株価の大暴落が襲った.それは繁栄を謳歌していたアメリカ社会を奈落の底に突き落とす契機となる.大量の失業者,経済活動の停滞――未曽有の大不況は様々な悲劇をアメリカ社会に引き起こした.大不況の原因はどこにあったのか? ニューディール政策は有効だったのか? 気鋭の経済学者が時代の全貌を描く.
目 次
第1章 株式市場
国民的熱狂
大暴落
第2章 20年代の繁栄
革新派の時代からノーマルシーへ
緊張から弛緩へ
理想の再構築
第3章 大不況
たち昇る暗雲
未曾有の大不況
希望が死ぬとき
第4章 ニューディール
ニューディール
夢と献身の時
ニューディールの成果
第5章 大不況の経済学
独占と過少消費
景気循環と長期停滞
アメリカ新古典派とケインズ
マネタリスト論争
ためらうアメリカ
エピローグ
サブプライムローンの破綻を起点にした世界的な金融危機。もはや世界大恐慌は避けられないと考えても間違いはないでしょう。その原因の一端であるサブプライムローンを売っていた人物による赤裸々なサブプライムローン業界の告白です。日本でも、80年代後半に不動産バブルがあったのを記憶している人も多いと思いますが、サブプライムローン問題は、住宅を取得するほどの蓄えや収入がないのに住宅バブルによって住宅を取得できるようになってしまった米国で、何故そのような仕組みが出来上がってしまったのか、つまり、インチキな仕組みが出来上がってしまったのかを現場のサイドから記述されています。現在の世界的な金融危機を原因までさかのぼって調べたい人に向いている本かもしれません。
著者/訳者名 リチャード・ビトナー/著 金森重樹/監訳 金井真弓/訳
出版社名 ダイヤモンド社 (ISBN:978-4-478-00589-7)
発行年月 2008年07月
サイズ 280P 19cm
価格 1,680円(税込)
本の内容
サブプライム業界に最前線で関わってしまったレンダー(貸付業者)の懺悔と糾弾。
(1)一握りのリーダーの不正行為で引き起こされる大半のビジネスの厄災と異なり、業界の端から端まで広がる、体系的な問題の結果だということ。
(2)全米国人の65%が住宅を所有しているせいで、これまでにないほど多くの人に広範囲の影響を与えた。
(3)不動産市場の現在の下落が止まって損益の計算がされたら、損失額は何兆ドルにもなるだろう。
目 次
第1章 転換点
第2章 サブプライムローンというビジネス
第3章 ブローカー:モーゲージ・ファイナンスの弱点
第4章 ローン借り入れのための芸術的な手口
第5章 ウォール街と格付け機関:最悪の強欲者たち
第6章 断片をひとつにまとめる
第7章 再び軌道に乗る
著者情報
ビトナー,リチャード(Bitner,Richard)
コーネル大学とノーザン・アリゾナ大学で学位を取得後、GEキャピタルやGMAC(ゼネラルモーターズの金融子会社)で住宅金融の仕事に9年間携わった後、2000年9月にサブプライムローン会社、ケルナー・モーゲージ・インヴェスツメント社をテキサス州ダラスに設立、取締役を務める。2005年末に事業の悪化からサブプライム業界を離れ、住宅ローン業界に関する執筆・講演活動を始める。現在は出版とコミュニケーション関連事業の会社、LTVメディアの代表取締役
金井 真弓(カナイ マユミ)
税理士事務所、損害保険会社などで勤務後、フリーの訳者として独立