32042284.JPG アメリカの外交を考える上でアメリカの世界戦略を考えないと何もわからない。そういう意味で、素人には一度は読んでおきたい標準教科書のように感じた。コンパクトにまとまっていてよいと思いました。この本を読んだ上で、もっと知りたい場合は専門書をあたればよい。日米関係一つとっても、その時代時代でアメリカは彼らの戦略を練っている。それを分析しないことには始まらないわけだが、いつも同じ日米関係のように素人には思われるが、その都度いろいろ微妙な揺らぎがあることをこの本を読んで少しは理解できたように思う。素人でも、深く考えるにはこの本に書かれているような内容を吟味検討した上で、自分なりに日米関係を考えなければならないと思うようになった。

 一昔前のクリントン前大統領のことを思い出そうとしても、彼の女性スキャンダルのことしか思い浮かばない。日本政府に対して厳しい要求を突きつけてくるな、とのうろ覚えの記憶しかない。どの様なものだったのかあらためてこの本で勉強した思いだ。テレビ報道ばかりしか見ていないと、このようなお粗末な記憶しか素人・庶民には残らないものだ。テレビとは、人間にものを考えなくさせるものだということを思い知った。

 ポール・ウォルフォウィッツのことが頻繁に出てきて興味深かった。ネオコンの一味だ。最近では、自分の彼女にそのポスト以上の給与を与えるように裏工作していたことが暴露されて恥をかいた男だ。この男が、どのようにしてイラクの前フセイン大統領の体制を転覆していく工作を練っていたかが明らかにされている。

 最近、「帝国」ということを扱った本や論文が目につくことが多いが、この本でも第四部では「帝国化するアメリカ」ということで論じられている。「帝国主義者」などという言葉は久しく聞くことがなくなっているが、あらためて「帝国」が問題化するのであるから「帝国主義者」も使われてくるのかもしれない。この世紀にとっての「帝国主義者」は、アメリカのネオコンがそれに該当するのかもしれない。チェイニーやウォルフォウィッツは、その代表格か。ブッシュは「帝国主義者」の操り人形か。

著者/訳者名 菅英輝/著
出版社名 中央公論新社
(ISBN:978-4-12-101937-0)
発行年月 2008年03月
サイズ 238P 18cm
価格  819円(税込)

本の内容
二〇〇三年三月、ブッシュ政権は対イラク戦争に踏み切った。世界の平和と安全を説く国がなぜ先制攻撃を仕掛けるのか。そこには、冷戦終結後、EUと中国の挑戦を受けるなか、圧倒的な経済力と軍事力をもとに世界一極支配を目指すアメリカの戦略がある。本書では朝鮮戦争からヴェトナム戦争、そして「ブッシュの戦争」に至るアメリカ式戦争の特徴と問題点を、政策決定者たちの証言を交えて分析し、「帝国」の今後を展望する。

目  次
第1部 世界戦略のなかのアジア(朝鮮戦争からヴェトナム戦争へ
冷戦後のアジア戦略
ブッシュ(ジュニア)政権の対テロ戦争)
第2部 対ヨーロッパ関係―協調と対立と(冷戦期の米欧関係
冷戦の終焉とEUの挑戦
クリントンの戦争とアメリカ外交の軍事化)
第3部 9・11と対イラク戦争(「新世界秩序」建設の夢
世界一極支配のシナリオ
対イラク攻撃計画の作成
イラク戦争の開始とEU中核諸国の反応)
第4部 帝国化するアメリカ(9・11とアメリカの帝国化
アメリカ外交の伝統と戦争)

著者情報 菅 英輝(カン ヒデキ)
1942年(昭和17年)、熊本県玉名市に生まれる。オレゴン大学政治学科卒業、ポートランド大学大学院政治学修士課程修了、コネチカット大学大学院博士課程修了。法学博士(一橋大学)。北九州大学外国語学部助教授、同教授を経て、九州大学大学院比較社会文化研究院教授。現在、西南女学院大学教授。専攻、アメリカ政治外交論、国際関係論

漆原朝子のチャイコフスキー/メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲← この記事を書いていた時に聴いていた曲です。漆原朝子のチャイコフスキー/メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲。



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