『評伝ジョージ・ケナン 対ソ「封じ込め」の提唱者』を読んでみました。図書館で偶然見つけたもので、素人が読むような本ではないので何か感想を書くには荷が重すぎます。20世紀の政治・外交史では有名なケナン。薄い本なのですが、ルカーチの言い回しに独特なものがあって少し読みづらい本です。
著者/訳者 ジョン・ルカーチ/著 菅英輝/訳
出版社名 法政大学出版局
発行年月 2011年08月
サイズ 274P 20cm
販売価格 3,045円
本の内容
101年にわたる生涯でケナンが主張し続けたものは何であったか?外交官にして、政治学者・歴史家だったケナンにアメリカの良心を見る。
目 次
1 孤独な青年時代
2 国務省外交局の時代
3 アメリカ丸のブリッジに立つ一等航海士
4 ワシントンからプリンストンへ
5 アメリカの良心
6 歴史家
7 哲学、宗教・追憶・晩年
ISBN 978-4-588-36606-2
著者情報
ルカーチ,ジョン(Lukacs,John Adalbert)
1924年ハンガリー生まれ。1946年、共産化するハンガリーを離れ、アメリカに移住する。1947~94年までチェスナット・ヒル・カレッジ(Chestnut Hill College)歴史学部で教鞭をとったほか、ジョンズ・ホプキンス大学、コロンビア大学、プリンストン大学などの客員教授を務めた
菅 英輝
1942年生まれ。現在、西南女学院大学人文学部教授。専攻はアメリカ外交史、国際関係論
アメリカの外交を考える上でアメリカの世界戦略を考えないと何もわからない。そういう意味で、素人には一度は読んでおきたい標準教科書のように感じた。コンパクトにまとまっていてよいと思いました。この本を読んだ上で、もっと知りたい場合は専門書をあたればよい。日米関係一つとっても、その時代時代でアメリカは彼らの戦略を練っている。それを分析しないことには始まらないわけだが、いつも同じ日米関係のように素人には思われるが、その都度いろいろ微妙な揺らぎがあることをこの本を読んで少しは理解できたように思う。素人でも、深く考えるにはこの本に書かれているような内容を吟味検討した上で、自分なりに日米関係を考えなければならないと思うようになった。
一昔前のクリントン前大統領のことを思い出そうとしても、彼の女性スキャンダルのことしか思い浮かばない。日本政府に対して厳しい要求を突きつけてくるな、とのうろ覚えの記憶しかない。どの様なものだったのかあらためてこの本で勉強した思いだ。テレビ報道ばかりしか見ていないと、このようなお粗末な記憶しか素人・庶民には残らないものだ。テレビとは、人間にものを考えなくさせるものだということを思い知った。
ポール・ウォルフォウィッツのことが頻繁に出てきて興味深かった。ネオコンの一味だ。最近では、自分の彼女にそのポスト以上の給与を与えるように裏工作していたことが暴露されて恥をかいた男だ。この男が、どのようにしてイラクの前フセイン大統領の体制を転覆していく工作を練っていたかが明らかにされている。
最近、「帝国」ということを扱った本や論文が目につくことが多いが、この本でも第四部では「帝国化するアメリカ」ということで論じられている。「帝国主義者」などという言葉は久しく聞くことがなくなっているが、あらためて「帝国」が問題化するのであるから「帝国主義者」も使われてくるのかもしれない。この世紀にとっての「帝国主義者」は、アメリカのネオコンがそれに該当するのかもしれない。チェイニーやウォルフォウィッツは、その代表格か。ブッシュは「帝国主義者」の操り人形か。
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