ラカンの本は、1冊も読んだことないしフロイトの本も読んだことがない。ただ、ラカンもフロイトも一般の人が持っているちょっとした知識はある。その程度だ。その私がこの本『ラカンはこう読め!』を読んだのは、ただ「スラヴォイ・ジジェク」を読みたいという願望を持っていたからだ。その程度の私が読んでみての感想は、「読める」というものだ。難しい議論はわからないものの素人でも読み通せるようにように書かれている。映画を取り上げて彼の解説が書かれていたりするので、西欧の一流知識人がその知性に裏打ちされた解説を読むのもおもしろい。もともと、この本は、イギリスのグランタ出版社から出ている入門シリーズの1冊だからだ。これを読んで、更にスラヴォイ・ジジェクの本を読んでもいいしラカンに進んでもいいしフロイトに興味を覚えてそちらに進んでもいいだろう。私はといえば、更にスラヴォイ・ジジェクの本を読みたくなった。彼の本は、今年(2008年)にはいって何冊も出版されている。
「死の前に生はあるのか-日本語版への序文」で、ジジェクは、黒澤明監督の『羅生門』を取り上げて彼のうんちくを傾けているのだが、この短い序文でも精読してみるといろいろな哲学的知識が要求されて完全に理解するのは難しい。だから私はジジェクを読みたいと思うのだろう。あらためて序文を読んでみてそのように感じた。
著者/訳者名 スラヴォイ・ジジェク/著 鈴木晶/訳
出版社名 紀伊国屋書店 (ISBN:978-4-314-01036-8)
発行年月 2008年02月
サイズ 231P 20cm
価格 1,890円(税込)
本の内容
ついにジジェクが書いた!!現代思想界の奇才による待望のラカン入門。
目 次
1 空疎な身ぶりと遂行文―CIAの陰謀に立ち向かうラカン
2 相互受動的な主体―マニ車を回すラカン
3 “汝何を欲するか”から幻想へ―『アイズ・ワイド・シャット』を観るラカン
4 “現実界”をめぐる厄介な問題―『エイリアン』を観るラカン
5 自我理想と超自我―『カサブランカ』を観るラカン
6 「神は死んだが、死んだことを知らない」―ボボークと遊ぶラカン
7 政治のひねくれた主体―モハンマド・ボウイェリを読むラカン
著者情報
ジジェク,スラヴォイ(Zizek,Slavoj)
1949年、スロヴェニアのリュブリアナ生まれ。哲学者・精神分析学者。現代政治から大衆文化まで縦横無尽に論じる現代思想界の奇才。現在、ロンドン大学バークベック・コレッジ人文科学高等研究センターの国際ディレクター
鈴木 晶(スズキ ショウ)
1952年、東京生まれ。現在、法政大学国際文化学部教授。専攻は、文学、精神分析学、舞踊学