『蟹工船』は、文学史に出てくるから、受験勉強をまともにした人は名前ぐらいは知っているだろう。プロレタリアという言葉自体は、全く知らないか、懐かしい響きとして聞き知っているか、実際使ったことがあるか、人それぞれだろう。60年や70年安保を経験している人達の中で、インテリといわれる人達は盛んに使っていた。そもそもフランス語なのだ。ドイツ語で言うとプロレタリアートになる。

 現代の若者が(老人もだが)全く未来に希望がもてない時代に突入して、もう久しいが、その時代の雰囲気が蔓延し、その雰囲気にぴったりの小説が再発見されたということなのか。私は、一度も『蟹工船』を読んだことがない。何か重苦しい気分になってきた。

 そういえば、『プロレタリア文学はものすごい』荒俣宏/著 平凡社新書 を買って(2000年11月)まだ一度も読んでいないことに気がついた。
プロレタリア文学:名作『蟹工船』異例の売れ行き – 毎日jp(毎日新聞)

プロレタリア文学:名作『蟹工船』異例の売れ行き
 ◇高橋源一郎さん雨宮処凛さんの本紙対談きっかけに

 日本のプロレタリア文学を代表する作家、小林多喜二(1903~33年)の『蟹工船(かにこうせん)・党生活者』(新潮文庫)が、今のワーキングプア問題と絡んで異例の売れ行きを示している。今年、すでに例年の5倍を超す2万7000部を増刷した。格差社会の現実を映したような現象が、関係者の注目を集めている。【鈴木英生】

 きっかけは、今年1月9日に毎日新聞東京本社版朝刊文化面に掲載された作家の高橋源一郎さん=と雨宮処凛(かりん)さん=の対談。2人は「現代日本で多くの若者たちの置かれている状況が『蟹工船』の世界に通じている」と指摘。それを読んだ元フリーターの書店員が、ブームに火を付けた。

 『蟹工船』は元々、1929年に発表された。カムチャツカ沖でカニを捕り、缶詰に加工する船の労働者が、過酷な労働条件に怒り、ストライキで立ち上がる話だ。一昨年と昨年には漫画版が相次いで出版されるなど、多喜二没後75年の今年を前に流行の兆しがあった。

 対談で、雨宮さんは「『蟹工船』を読んで、今のフリーターと状況が似ていると思いました」「プロレタリア文学が今や等身大の文学になっている。蟹工船は法律の網をくぐった船で、そこで命が捨てられる」と若者たちの置かれている状況を代弁するように発言。高橋さんも「今で言う偽装請負なんだよね、あの船は」「僕は以前(略)この小説を歴史として読んだけれど、今の子は『これ、自分と同じだよ』となるんですね」と応えた。

 対談を知った東京・JR上野駅構内の書店、「BOOK EXPRSSディラ上野店」の店員、長谷川仁美さん(28)は2月に『蟹工船』を読み直し、「こんなに切実で、共感できる話だったんだ」と感じた。長谷川さんも、昨年まで3年間、フリーターだったという。

 そこで、長谷川さんは「この現状、もしや……『蟹工船』じゃないか?」などと書いたポップ(店頭ミニ広告)を作り、150冊仕入れた新潮文庫を店頭で平積みにしてみた。すると、それまで週にせいぜい1冊しか売れなかった同書が、毎週40冊以上売れ続け、多い週は100冊を超えた。平積みにしてから約2カ月半で、延べ約900冊が売れたという。

 この動きを見た新潮社も、手書き風に「若い労働者からの圧倒的な支持!」と書いたポップを数百枚印刷して全国の店に配ると、ブームが一挙に拡大した。そこで、3月に7000部、4月に2万部を増刷した。新潮社は今後、ポップをさらに1500枚印刷し、宣伝を強化する。

 新潮社では「こうした経緯で古典が爆発的に売れるケースは珍しい。内容が若い人たちの共感を呼んでいるうえ、03年の改版以来使っている、戦前の図柄を元にしたロシアフォルマリズム風の表紙も新しい読者に受けているようだ」と話している。
 ◇今の経済構造と類似--文芸評論家、川村湊さんの話

 『蟹工船』の労働者は、形式上、本人の意思で船に乗っている。だが、そこを脱する機会がない。これは、若者をフリーターから抜け出させない今の経済構造と似ている。輸出用の缶詰を作る労働者が搾取される構図も、今の世界資本主義のあり方を先取りして表現した。現代の若い読者には、この物語のような決起への呼びかけに対する潜在的な欲求があるのかもしれない。

毎日新聞 2008年5月14日 東京夕刊



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