「水素爆発について、東電側が爆発前に予測できていなかった」
「長時間の全電源喪失時に格納容器を守るため実施するベント(排気)のマニュアル(手順書)がなかった」
これを読んで、あきれてしまった。NHK 教育テレビ(8月14日放送の「ETV特集アメリカから見た福島原発事故」)で「マーク1(東京電力福島第1原発)」を設計した人が欠陥原発だから廃炉にすべきだった、と発言していたのも衝撃だったし、水素爆発も予想していた通りに爆発した、と発言していたのを聴いて知っている今現在、東電の「素人ぶり」が際立つ感想を禁じ得ない。肝心なことを何も知らない「ド素人」が原発を運転していたのだ、ということだ。
毎日新聞 8月17日(水)2時31分配信
東京電力福島第1原発事故で、3月12日に起きた1号機の水素爆発について、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の聴取に対し、東電側が爆発前に予測できていなかったと証言していることが分かった。長時間の全電源喪失時に格納容器を守るため実施するベント(排気)のマニュアル(手順書)がなかったことも判明。このため、作業に手間取るなど、初期対応で混乱した様子が浮かび上がった。関係者によると、政府事故調はこれまでに、同原発の吉田昌郎所長ら東電社員や政府関係者らから聴取を続けている。
1号機の水素爆発は、東日本大震災の翌日の3月12日午後3時36分に発生。建屋の上部が吹き飛んだ。水素は、燃料棒に使用されるジルコニウムが高温になって水と反応し発生したとみられている。
関係者によると、事故調に対し、東電側は原子炉や格納容器の状態に気を取られ、水素が原子炉建屋内に充満して爆発する危険性を考えなかったという趣旨の発言をし、「爆発前に予測できた人はいなかった」などと説明しているという。
また、ベントについては、マニュアルがなかったため設計図などを参考にして作業手順などを検討。全電源が喪失していたため作業に必要なバッテリーなどの機材を調達し始めたが、型式などの連絡が不十分だったこともあり、多種多様な機材が運び込まれて、必要なものを選別する手間が生じた。
さらに作業に追われる中、機材が約10キロ南の福島第2原発や作業員らが宿泊する約20キロ南のJヴィレッジに誤って配送され、取りに行かざるをえない状況になった。ある社員は「東電本店のサポートが不十分だった」と話しているという。
一方、1号機の炉心を冷却するための非常用復水器(IC)が一時運転を中断していたものの、吉田所長ら幹部がそのことを把握せず、ICが稼働しているという前提で対策が検討されていたことも判明。事故調の聴取に吉田所長は「重要な情報を把握できず大きな失敗だった」などと話しているという。
事故調は、東電側からの聴取内容と一連の事故に関するデータなどを精査した上で事故原因を解明していく方針だ。
◇震災翌日の首相視察「目的分からぬ」
「目的が全く分からない」--。菅直人首相が東日本大震災翌日の3月12日、東京電力福島第1原発を視察したことについて、現場のスタッフが政府の「事故調査・検証委員会」の調べに、懐疑的な感想を述べていることが明らかになった。
菅首相からの「なぜこんなことになるのか」との質問には、「自由な発言が許され、十分な説明をできる状況ではなかった」と振り返る説明があった。また、海江田万里経済産業相が12日午前6時50分、1号機の原子炉格納容器の圧力を下げるベントの実施命令を出したことに、現場は「違和感が強く、意図的にぐずぐずしていると思われたら心外」と受け止めたという。
陸上自衛隊のヘリコプターによる使用済み核燃料プールへの放水には、「ありがたかったが、作業効率が極めて低いと感じた。プールに入っていないと思われるケースが多かった」との感想があったという。
◇原発事故調査委・ヒアリング経過メモ(要旨)
事故調査・検証委員会が、福島第1原発の吉田昌郎所長やスタッフ、関連企業の社員ら、学識経験者にヒアリングした経過を8月にまとめたメモの要旨は次の通り。
<ベント>
・11日深夜から12日未明にかけ、炉心損傷を認識した吉田昌郎・福島第1原発所長がベント準備を指示
・マニュアルがなく、現場で設計図などを参照しながら必要な措置を検討し、弁操作に必要なバッテリー調達などから始めた。ストックを把握していなかったため、構内を探したり本店に調達要請したりと手間取った
・最終的にベントが成功したかは確認できていない。「成功した」とされているのは、格納容器の圧力低下や放射線量増加などの状況証拠からの推測。現在も確証を得られない
・ベントや注水に必要な資材が福島第2原発などに誤搬送され、第1原発から取りに行く人員を割かれるなど、本店のサポート体制は不十分
・海江田万里経済産業相のベント実施命令には違和感が強く、意図的にグズグズしていると思われたとしたら心外
<水素爆発>
・1号機の水素爆発を予測できた者はいない。爆発後数時間以内に、炉心損傷で発生した水素が建屋に充満して爆発した可能性が高いと結論付けた
<甘い認識>
・炉心の熱を海に逃がすための海水ポンプが津波で故障した場合、非常用復水器(IC)などで炉心冷却しながら復旧すればよいという程度の認識だった
<4号機の損傷>
・3号機から排気ラインを通じて逆流した水素がたまって爆発した可能性が考えられるが、逆流させるだけの空気圧が発生していたか疑問はある
<菅首相の福島原発視察>
・12日早朝の首相来訪は目的・趣旨がまったくわからない
<海水注入>
・防火水槽の淡水貯水量には限界があり、いずれ海水注入が必須になるとの認識はあった
・12日夕に官邸、東電本店から海水注入中断の指示があったが、注水を続けないと大変なことになるので、従ったふりをして継続
<1号機の非常用復水器停止把握せず>
・担当作業員がICを11日午後6時半から約3時間、停止させたが、吉田所長らは把握せず、動いていることを前提に対策を講じた
<ヘリ、放水車などによる放・注水>
・電源復旧作業の中断を余儀なくされた
・散発的な放水は作業効率が低く、使用済み核燃料プールに入っていないと思われるケースが多かった
<想定地震超える>
・福島第1原発2、3、5号機の東西方向で、想定していた揺れである基準地震動を超えたが、東電によると原子炉の安全上重要な設備に大きな損壊は確認されず
<想定津波を再計算>
・09年2月、海底地形と平均潮位を見直して想定津波を再計算。その結果、想定津波の高さが上昇した5、6号機については、非常用海水ポンプの電動機の架台の浸水対策をした
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