32123281.JPG著者/訳者名 ジョージ・ソロス/著 徳川家広/訳
出版社名 講談社 (ISBN:978-4-06-214915-0)
発行年月 2008年09月
サイズ 251P 20cm
価格 1,680円(税込)

 読んで大変おもしろい本だった。歴史とか哲学(大陸系の哲学でなく、つまり、デカルトとかヘーゲルではなく、アメリカやイギリスの分析哲学)を少しでも知っていれば、第1章から第4章は、それほど難しい議論をしているわけではないということがわかるだろう。分析哲学の基礎や時代の大きな流れを主体的に勉強していれば、ソロスの「再帰性」の理論は、常識的なことを話していることだとわかる。特に、自然科学と社会科学とでは、扱っている対象が違う上、人間の行動というのは、不確実な知識や情報で行動するゆえ、自然科学的な手法は使えない、ということを押さえていれさえすれば、ソロス理論は難しくない。

 この本は、最初に「解説」なるものが書かれていて面食らう本だが、ソロスの理論を少しでも理解しやすくすると言うか、読むのに抵抗を無くするために「解説」を配置したのだが、解説者が、歴史も哲学もおそらく(私の想像だが)勉強したことがない人物が書いたもので、しかも、今となっては、リーマンショックを体験している読者が読むには、あまりにも無価値な「解説」が載っている! と思える。こんなものを読み飛ばして、ソロスの理論を読み進めた方が良いであろう。リーマンショックを経験し、世界大不況に突入している今となっては、読み進めている読者は、ソロスの主張していることが、大方真っ当な主張だということがわかるだろう。

 投資家という人間を肯定的に見ることが未だできない私だが、ソロスという投資家中の投資家を、価値判断を持って評価するには、今しばらく時間を要する、というのが率直な感想です。金融市場に当局の規正が必要だというソロスの主張には、素直にうなずけるし、しかしながら、がんじがらめの規正はダメだとも主張するのだが、どこまでなら良いのか、については素人の私には皆目見当も付かないのも正直な話だ。今回の金融危機で今までのパラダイムは、終わりを告げたと主張する(彼の言葉で言えば、レーガン元大統領からの超バブルは、はじけたという)。この主張は、納得いく方が多いと思うが、ソロスの本を読んでも、新しいパラダイムはどのようなものになるかは、わからない。ソロス流に言えば、再帰理論によって「わからないのか当たり前」とでも言われそうだが。 Read the rest of this entry »

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