『現代社会主義を考える』(岩波新書)副題が―ロシア革命から21世紀へ―です。1988年の出版ですから、この本では「ベルリンの壁崩壊」や「ソ連邦の消滅」などは当然出てきません。著者は、専攻か「ソヴィェト政治史」ですから、私も歴史の本として読んでいます。というのも、社会主義の本を「今さら読む価値があるのか?」という疑問は、当然わたしの心の中にもわいてきます。従いまして、この本を歴史の本として取り上げるなら、当然読む価値を考えるまでもなくあるわけです。

 だが、同時に、歴史という観点だけでなく、革命を推進した人物、レーニン、スターリン、トロツキーなどの革命家の基本的な知識をふまえた上での確執にも興味があります。歴史上誰も成し遂げていなかったプロレタリア革命を推進した指導者としての確かさと限界を見極めることは、社会主義というものを現代的に捉え返す上でも必要なことです。

 「民主集中制」等の由来と意味などを真剣に論じたりすることは、例えば、日本で政権を執った民主党の政治を見ているにつけ、政党組織論という理論問題を考える上で参考になるものと考えます。民主党の政党組織論というものがあるのかも怪しいのですが、外部からながめていると、組織論以前の状態に見えてきます。きわめてお粗末のように見えます。また、「レーニン主義」と「スターリン主義」の違いを真剣に論じたりすることは、その当時何が問題でありその核心が何であったか理解する上で避けて通れない事柄です。

 E・H・カーやトイッチャーらロシア革命を扱った本をたくさん出している著者にも言及があって参考になりました。更に、カッシーラー(哲学者)等の学者の著作にも触れられて今後読んでみるべき文献の参考にもなります。政治史の専門家が書いたものですから、今日に至っても、新書という形式ですしわかりやすく解説されていて参考になります。

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