実況の森中直樹アナウンサーが何度も「歴史にのこる名勝負」というような発言をしていたが、その言葉がぴったりの試合だった。フェデラーが2セットダウンで何度も追いつめられながら、感情を抑制し自分を信じて「勝利を収めるためにどうしたらいいか」を沈思黙考しているような態度が見事だった。準決勝でのフェデラー対サフィン(ロシア)の時のような、サフィンが感情を抑えきれずラケットを椅子にぶつけるようなことは一切無かった。フェデラーは実にジェントルマンだった。

 そして、もう一つ印象に残ったのは、ナダルが勝利してファミリー・ボックスによじ登ったが、その際誰からかスペイン国旗を渡されたのだが、ナダルはそれを肩にかけることはあったが、国旗を広げて誇示することは一切無かった! 実に爽やかだった。私が思うに、スペインとかスイスとかの名誉をかけた試合ではなかったことが明らかだったからだ。今さら国旗を掲げて誇示しなくても、誰もがフェデラーがスイスで、ナダルがスペインだということは知っているからだ。センターコートを見回しても国旗はほとんど見られなかった。ウィンブルドンとはそういうところなんだということをあらためて認識した思いだ。

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