32114701-00.JPG著者/訳者名 坪井善明/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-431145-4)
発行年月 2008年08月
サイズ 254,4P 18c
価格 819円(税込)

 ベトナムについて何を知っているだろうと考えた時、最近では、日本の女性達がベトナム旅行をしているとか。どういう目的なのか? ベトナム料理か、あるいはベトナムの雑貨が目的? ベトナム戦争といっても、すでに終結したのが1975年でしたから、もう知らない人の方が多いのかもしれません。ベトナムは、それまで30年あまり独立のための戦争をしていたことを頭の片隅に置いておいてほしい。30年も戦争? 日本の敗戦からだから1945年から1975年まで。だから30年になる。しかし、その前にもフランスの植民地だったり、日本軍の占領時代もあったから30年どころではないのだ。そう考えると、何と過酷な運命に置かれた国だろうと思う。ベトナム戦争中は、戦略爆撃機B52によって枯れ葉剤がばらまかれ、これは、別の言い方をすれば、ダイオキシンをB52によってばらまかれたと言ってもいいものだ。何と、極悪非道なことをされたのだろう!

 ベトナムがアメリカとの戦争で勝利して、世界の人達は、少なくとも反戦ということに意識がまわっていた人達は、ベトナム人の闘いを尊敬の眼差しで見ていたのもつかの間、程なく隣国のカンボジアへと侵攻していったベトナムには失望を持った人達も多かったであろう。中国が中華人民共和国を打ち立てた余勢で独立国・チベットを武力併合したり北朝鮮軍と合同で南進して朝鮮戦争になったり、という構図と同じであった。勝利すると、どこか気が大きくなるもののようだ。

 1979年に中国とベトナムが戦争をしたという記憶をお持ちの方もいるでしょう。16日間で終わった、とこの本を読んで知った。中国は、アメリカの了解を取り付けて行ったと知った。その頃は、中国とソ連が仲が悪く、ベトナムはソ連に与していたから、戦争も起きたのだろう。隣国カンボジアは、ポルポト政権が毛沢東主義を極端なかたちで政策を実行して、自国民を大量虐殺をしていたのも、その当時の政治情勢に大きく影響している。ベトナムは、カンボジアにヘンサムリン政権という傀儡政権をつくって10年以上もカンボジアに干渉し続けていた。カンボジアから完全撤退したのが1989年の9月であった。

 表面的に知っていることを思いつきで書いたが、ベトナムの過去と現在を現実的にも理論的にも包括的に知るには、この本が最適なように思いました。新書だからたかだか250ページ。でも、コンパクトにまとまっていて、しかも、学者の書いたものだから、理論的にもまとまった書物として読むことができます。共産主義政権の独裁を、今後どのように民主化していくのか、というような問題を考えるのに参考になると思います。
Read the rest of this entry »

blank