『ユナボマー爆弾魔の狂気 FBI史上最長十八年間、全米を恐怖に陥れた男』「タイム」誌編集記者/著 田村明子/訳 ベストセラーズ

 昔から気になっていたが、ユナボマー関連の本をちゃんと読むのは初めてです。むかし本屋さんで立ち読みしたのがきっかけでずっと気になっていました。その時は、本の価格が高かったものですから、買うのをあきらめました。18年間も孤独な生活をしながら爆弾を送り続け、3人を死亡させ多くのけが人を出したユナボマー。彼はどんな人物だったのか? キーワードは、孤独、高学歴、爆弾魔、反文明。ユナボマーは、1996.4.3 逮捕されたが、その当時のインターネットには、「ユナボマーを英雄視するメッセージであふれかえる」たそうです。私は、英雄視はしないけれども、やはり興味があった。彼には、興味をそそるものがあるのだろう。それは何なんだろう? いまだによくわからない。

 ポーランドから移民してきた2世の両親から生まれたテッド(ユナボマー)だったが、両親とも教養が高く、教育熱心で子ども達に自然とのふれあいをも大事にした教育をしていた。自然の生活でのサバイバル術も身に付けさせていた。テッドもその下の弟(デビッド)も、人も羨むような一流大学を出ていた。テッドは、ハーバード大学、弟のデビッドは、ニューヨークのコロンビア大学を出ている。ユナボマーは、大学院も出て数学の助教授までつとめた(カリフォルニア大学バークレー)。それが何故爆弾魔になっていったのか? この辺が本を読んでもよくわからないとこです。1968年頃の大学紛争やベトナム反戦闘争も影響しているだろうし、産業革命の急激な「発展」も影響し、エコロジー思想も影響しているようなことは書かれています。だが、爆弾魔になるには何か飛躍がある。

 カリフォルニア大学バークレーの助教授職を辞めいろいろな職に就くのだがうまくいかない。小さい時から秀才だったユナボマーの唯一の弱点は、幼い時から人付き合いが苦手だった。しかも数学専攻という純粋な基礎学問を長年積み重ねてきたものにとって、世間になじむにはあまりにも無防備だったように、私は思う。実学、例えば経営学とか金融工学あたりを専攻していれば、もっと違う人生を歩むこともできたかもしれません。

 ユナボマーは、モンタナの田舎に掘っ立て小屋を建て、孤独な隠遁生活を始めるのだ。しかもおもしろいことに、兄に影響された弟(デビッド)までが、テキサスの乾いた大地に穴を掘って住んでしまうのだ。しかし、弟の方は、ある時期から普通の生活にもどっている。それは、心の支えとなっていた女性の存在が大きかったようだ。後にこの女性と結婚もしている。そして、もっと驚くのは、ユナボマーが自分の兄ではないかと、思うようになっていき、最後はFBIとの接触をしていくのだ。

 高い教養と自然生活でのサバイバル術。しかも、人付き合いが極端に苦手。時には、これらがとんでもない方向に自分を導いてしまう。ユナボマー事件は、それを示している。

本の内容

近年の犯罪史上で最大のお尋ね者と呼ばれたユナボマー。彼は十八年間ものあいだ政府機関から巧みに逃れ、対FBIと最長の捕りもの劇を操り広げた。一九九六年の四月三日、FBIの捜査官たちは、モンタナ州にあるベニヤ板の小屋を取り囲んだ。そして世間は初めて、ユナボマーと呼ばれた犯人の容疑者、テオドア・カジンスキーの素顔を見ることになった。本書は、『タイム』誌のジャーナリスト・チームが、彼の悲惨な過去、狩る者と狩られる者のゲーム、そしてFBIがどのようにして彼を逮捕することになったかの経過を綴り、犯罪史上でもっとも狡猾な連続殺人犯と信じられている男の全貌を明らかにしたものである。

目  次

1 世捨て人の隠れ家
2 天才少年の屈折
3 仮採用の数学助教授
4 山男はいつも自由である
5 見えてきたパターン
6 隠遁生活が精神構造に与える影響
7 口を開いた爆弾魔
8 血と名誉
9 回答と疑問

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