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著者/訳者名 中谷巌/著
出版社名 集英社インターナショナル (ISBN:978-4-7976-7184-1)
発行年月 2008年12月
サイズ 373P 20cm
価格 1,785円(税込)

 「懺悔の書」との評判で買ったのですが、少し読んでは放っておき、また少し読んでは放っておきして、読了していなかった本です。そもそも、ハーバード大学への留学の話がいきなり出てくるので、鼻持ちならないエリート意識が感じられ嫌だったのです。1969年にアメリカに留学する感覚がわからない。1969年というと、東大入試が中止になった年で、世間ではベトナム反戦闘争や世界的学園紛争の時代、中国では毛沢東の文化大革命の激動期、その時代に背を向けて学問に打ち込むこと自体が、私なんかには「異常」な振る舞いに見えて抵抗感が感じてしまいます。時代の潮流に背を向けた態度は、時代の潮流に鈍感な感性の持ち主のように感じてしまいます。

 この本を読んで一番よかったことは、経済人類学者カール・ポランニー(ボラニー)を知ったことだ。ポランニーの著書を読みたくなりました。

「本地垂迹説」まで出して、日本文化の独自性を説くことによって、いわば弱肉強食の新自由主義批判を展開している著者。新自由主義というものは、突き詰めていけばモラルを欠いたマネーゲームに陥り、そんなものは、日本人が島国で育んできたよき文化を壊すものであり、決別すべきものであると説く。この論理の展開から見ても、単なるグローバル化した金融の行き過ぎを批判したものでなく、壮大な構想のもと書かれている本であるように思います。

 貧困問題をあるいは貧困率の問題を正面から捉えていることです。新自由主義でいけいけどんどんの旗振り役からこのような論者が現れてくること自体注目し応援していかなくてはならないのかもしれません。貧困問題を真正面から捉える学者を増やしていかねばならないでしょう。 Read the rest of this entry »

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